自己免疫性肝炎におけるB細胞活性化機序に関し、免疫組織学的検討および血中可溶性B細胞活性化分子の測定を行い、以下の新たな知見が得られた。尚、検討には診断のために施行した肝生検組織および経過観察中に採血が必要と思われた際に得た血清の一部を用いたが、その際に採取した検体の一部を本検討に用いることを患者さんに説明し承諾を得た。 1.自己免疫性肝疾患における肝内浸潤活性化B細胞の解析とその臨床的意義 自己免疫性肝炎の肝内におけるCD23、CD5陽性B細胞の分布を検討した結果、両細胞ともリンパ濾胞様構造内に存在していた。またCD5陽性B細胞の出現の程度と組織学的、臨床的活動性とは関連は認めなかったが、血中γグロブリン値とは弱いながらも相関が認められた。さらに末梢血中のCD23、CD5陽性B細胞活数と肝内のCD23、CD5陽性B細胞の出現の程度とは関連が認めなかった。以上より自己免疫性肝炎では肝内に自己抗体産生性活性化B細胞活浸潤を認め、それが液性免疫異常に関与るす可能性が示唆されたが、末梢血活性化B細胞数を検討することで肝内におけるB細胞の活性化程度を推察することは困難であることが明らかとなった。 2.自己免疫性肝疾患における血中可溶性CD23分子の測定 代表的なB細胞活性化マーカーである血中可溶性CD23分子は健常人に比し自己免疫性肝炎で有意に高値を示した。しかし可溶性CD23分子値と組織学的、臨床的活動性とは関与せず、抗核抗体価、血中IgG、γグロブリン値との関連も認めなかった。また可溶性CD23分子の遊離を促進するIL-4と可溶性CD23分子値の相関はなく、可溶性CD23分子によってその産生が誘導されるIgE、IFN-γ価との関連もなかった。以上より自己免疫性肝炎ではB細胞活性化マーカーの可溶性CD23分子が高値を示すが、その増加機序や臨床的意義は明らかにされなかった。
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