平成7年度の研究により非A非B非C型肝炎として絞り込まれた症例のうち、急性期の残存血清量等により2例の劇症化死亡例を含む10例の急性肝障害症例を対象に本年度の研究を行った。本年度の研究計画として、ヘルペス属ウイルスのポリメラーゼ領域を中心に、シーケンスデータベースよりコンピューター解析を行い、得られた相同的な塩基配列よりユニバーサルなプライマーを作成し、PCR法にて解析を行う準備をしていた。その前に、最近話題となっているG型肝炎と通常のB型肝炎ウイルス(HBV)マーカーが検出されないサイレントB型肝炎の関与について検討を行う必要が生じた。そこで、G型肝炎については報告されたウイルスゲノムの全塩基配列より5'非翻訳領域とヘリカーゼ領域に各々プライマーの対を作成し、nested RT-PCR法にて検出を試みたが、いずれの症例においても増幅はみられなかった。一方、サイレントB型肝炎については、前年度HBVゲノムのmajor S領域にプライマーを作成し、PCR法により検出を試みた時には全例で陰性の結果であったが、検出感度等を考慮し、本年度はHBVゲノムのプレコア領域を含む領域にプライマーの対を作成し、nested PCR法により再度検出を試みたところ、2例の劇症化例を含む8例において増幅がみられた。さらに、PCR増幅産物を直接塩基配列決定法によりシーケンスを行い、増幅産物がHBVゲノムの配列を有することを確かめるとともに、劇症化例のうち1例において、プレコア領域の28番目のセンスコドン(TGG)がスットプコドン(TGG)へと変異していることが捕らえられた。
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