研究概要 |
前年度までに、我々は、pre-S2領域の開始より39塩基にわたる部分は変化に富む領域で、これらの変異のパターンをHBS抗原のサブタイプ別のpre-S2配列との類似性より大きくtype I,II,III,の3型に分類できる事を明らかにしてきた。これらのpre S2型の重要性は、感染宿主のHLA型との関連にあり、トランスアミナーゼが高値でType I pre S2ウイルス感染患者の34例中29例がHLA-A24保持者であるのに対し、トランスアミナーゼが半年以上正常な患者では上記のような相関は見られなかった。さらに、HLA-A24陽性患者における、Type I pre-S2 HBV感染の重要性は、臨床経過を追えた10例の患者においても確かめる事ができた。つまり、血清ALT高値時期に認められたTypeI pre-S2 HBVは、消失又は他のpre-S2型への変換が認められた。さらに、このようなHLA-A24とType I pre-S2型の関連を、さらにHBVの無症候性キャリアー(ASC)において検討してみた。その結果、今回検討した、7例ASC全例においてI型pre-S2 HBV感染が認められた。これらの事実は、HLA-A24陽性者において、肝細胞障害が発現するためには、免疫寛容状態誘導時に感染した他のpre-S2型HBVからType I pre-S2を持つHBVへの変換(突然変異)が必要である事を示唆している。現在は、このHLA-A24とType I pre-S2との関連の機序を解析するため、A24を表出するB細胞株に合成ペプチドを結合させたものをターゲットとして用い、慢性肝炎患者の末梢血リンパ球のCTL活性を検討している。
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