研究概要 |
1.Lieberアルコール飼料にて4〜6週飼育したラットの肝は、組織にて脂肪変性、好中球浸潤などアルコール性肝障害の像が確認された.thioacetamide腹腔投与10〜12週のラットは、脾腫等がみられ、肝組織上 偽小葉形成、線維形成などの肝硬変の像を呈した.アルコール性肝障害及び肝硬変の適当な動物モデルが作成された. 2.アルコール性肝障害の類洞の毛細血管化(基底膜構造の出現)が起こると考えられる時期において、Differential Display法により、アルコール群と、コントロール群で、肝のmRNAを比較したところ、両者で多くの異なるバンドが検出された.細胞構築の変化に伴い多くのmRNAの調節機構が働いていることが示唆された.逆に基底膜の主な細胞外基質であるType IV collagenは同時期においてもNorthern Analysisで発現量の差が認められるほどではなかった. 3.類洞壁細胞に作用する血管作動性因子として、NOS,Endotherin,Hemoxygenaseなどの動態に注目されるが、アルコール投与ラット、thioacetamide投与ラットの肝のNorthern analysisの結果からはeNOSの発現とともにiNOSの発現もinduceされた.Hemoxygenaseはビリルビンの酸化代謝酵素で、一酸化炭素(CO)、ビリベルジン、Feなどが生成されるが、最近これらの分解産物がスカベンジャーの作用やcGMPの上昇作用など生理活性物質として位置ずけられている.今回、constitutiveなHemoxygenaseIIの発現は変化がみられなっかたのに対し、肝硬変モデルラット、アルコールラットでは HemoxygenaseIはその発現が有意に亢進していた. 以上のように1.アルコール性肝障害及び肝硬変の動物モデルが作成され、2.肝障害に伴う細胞構築の変化のさいに種々のmRNAの調節がかかわること.3.肝類洞壁細胞に作用する血管作働性物質として、NOS以外にHOIの調節が深く関わっていることが示唆された.
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