慢性アルコール性肝障害時の実質の繊維化には、Collagen繊維が病態の中心的な役割を担うと考えられている。本研究では肝類洞構造の網細血管化に伴い血管構成繊維の基底膜構造の変化をtype IV collagenの形成を指標に観察する事が一つの仮説であった。また、その刺激因子として、また血行動態を修飾する因子の病態生理を検討する事がもう一つの大きな目標であった。 Collagenの動態については、organ全体として把握するには、type I collagenが主要な動きを示すため、困難であった。Type IV collagenの変化はノーザン解析の感度では不可能で、Type Iの変化に相殺されてしまうため、今後は、kupper細胞や伊藤細胞などの細胞レベルでの検討が必要であると考えられた。また、アルコール性肝障害時には、高ビリルビン血症、エンドトキシン血症、高フェリチン血症はよく遭遇する病態であり、肝障害の指標として一般の肝酵素群とともに一種の細胞機能不全による上昇として考えられていた。しかし最近、たとえばビリルビンの代謝産物である一酸化炭素、鉄、ビリベルジンなどはスカベンジャー作用やcGMP上昇作用などの生理活性物質として位置づけられるようになった。こうした物質の上昇が生体の防御機構の一つの反応であり、血管構築細胞由来の酵素群(一酸化窒素:nitric oxide synthase、ヘム代謝酵素:heme oxygenase)の動態は血圧、肝血流の調節にかかわり、その中のあるものは細胞保護的に働いている可能性が考えられる。このような酵素群の動態の検討は、病態の解明に多くの示唆に富んだ知見を与えうる。 これまで、アルコール性肝障害および肝硬変の動物モデルが作成され、肝障害に伴う細胞構築の変化の際に、血管作動性物質として、NO、COなどの関わりを示したが、この両者は拮抗的に働く可能性が考えられた。また肝機能障害時に低血圧や機能的腎障害がしばしば合併するが、これは血管作動性物質の関与が指摘され、今回、血圧、イヌリンクリアランス等を指標にNOSやHOなどの関わりを検討した。 今後は、様々な肝障害病態モデルでの変化を検討し、また臨床検体にも応用を検討している。また、こうした物質にはサイトカイン的作用が指摘されており、肝繊維化の進展に対する関与も検討していく予定である。
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