*c-kit receptor tyrosin kinase活性の実験的阻害や遺伝的欠損動物を用いた最近の研究によって新たに提起された問題の解答を得るため、本年度の研究においては、消化管ペースメーカー機能の有無に関与すると言うc-kit発現細胞がinterstitial cells of Cajal(ICC)に一致するか否かについて検証した。 *材料にはモルモット小腸筋層間神経叢の剥離伸展標本を用い、抗c-Kit蛋白抗体(ACK2)、抗ヴィメンチン抗体による免疫染色を施した。また古典的染色像との対比をはかる上で、前年度も用いたZIO染色による観察も行った。 *その結果、モルモット小腸筋層間神経叢には、ACK2免疫染色、ヴィメンチン免疫染色およびZIO染色のいずれにおいても、同一の特徴を有する長い突起を持った多数の細胞が細胞性網状構造を構成するのが観察された。 *これまでの成果からZIO染色の細胞像はCajalの原著にみるICCに相当することが判明しており、モルモット小腸筋層間神経叢のICCはC-kit発現細胞に一致するものであり、ペースメーカー機能を持つものと推定した。また、細胞骨格蛋白としてヴィメンチンフィラメントを多量に含むことから同細胞は間葉系に由来する細胞であると結論した。 *更に、電子顕微鏡による観察から、同細胞は微細構造上、線維芽細胞に類似した特徴を有する細胞であると結論した。
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