研究概要 |
1.クローン病患者のアフタ様病変に関する研究 10例のクローン病患者と3例の大腸リンパ濾胞過形成患者を対象とし,通常電子内視鏡および拡大電子内視鏡を用いて大腸リンパ濾胞(LF)を観察・生検した.その結果,LF被覆上皮内にM細胞を確認できた.しかし,拡大観察にて紅暈を伴うが粘膜欠損を認めないLFでも走査電顕上150〜200μmのびらんを認め,その周辺を透過電顕にて観察することによりM細胞を確認できた.内視鏡上紅暈(+),粘膜欠損(-)のLFの86%(18/21)に光顕・電顕学的にびらんを認めた.また,大腸リンパ濾胞形成患者のLF被覆上皮を抗ヒトHLA-DRモノクローナル抗体を用いて免疫電顕すると,HLA-DR陽性遊走細胞以外にM細胞の細胞膜やvaculoseにHLA-DRが強く呈示された.非活動期クローン病患者のLFでは,HLA-DRは周囲粘膜上皮で弱く,LF被覆上皮でやや強く呈示された.これに対し,活動期クローン病患者のLFでは,周囲粘膜上皮と同様に著しいHLA-DRの呈示を認めた.以上の成績より,内視鏡観察での紅暈を有するLFはクローン病の最も初期の変化と考えられ,M細胞の存在するLF被覆上皮からアフタ様病変が始まることが想定された. 2.実験モデルを用いた研究 インドメサシンを経肛門的にラットの大腸に局所投与することによって作製された小腸縦走潰瘍モデルの初期病変と粘膜増殖能を走査電顕とBrdU法で検討した.その結果,走査電顕にて潰瘍誘発1時間後に中部小腸の絨毛のねじれが観察された.2時間後の中部小腸の粘膜増殖能は対照群と同様であったが,絨毛と腺窩の長さは低値を示した.6時間後には粘膜増殖能は低下していたが,腺窩の長さに差はなかった.以上より,本モデルの初期変化として,中部小腸粘膜の形態変化が重要と考えられた.
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