研究概要 |
1.クローン病患者のアフタ様病変に関する研究 平成7年度に引き続き,クローン病患者の大腸リンパ濾胞(LF)を通常電子内視鏡および拡大電子内視鏡を用いて観察し,得られたLF生検標本を透過ならびに走査電顕にて観察した.さらにM細胞のHLA-DRについて免疫組織化学・免疫電顕を用いて検討した.その結果,内視鏡観察での紅暈を有するLFはクローン病の最も初期変化であることが示唆され,M細胞の存在するLF被覆上皮からアフタ様病変が始まることが推定された. 実験モデルを用いた研究 インドメサシン誘発小腸潰瘍における小腸粘膜の初期病変を,(1)絨毛の形態変化(走査電顕による検討),(2)腺窩の増殖能(BrdUを用いた酵素抗体法による検討),(3)増殖因子の発現(RT-PCR法による検討)の3点から検討した.その結果は以下のように要約される.(1)走査電顕上,インドメサシン投与1時間後に腸間膜付着側の絨毛のねじれが観察され,3時間後には絨毛上皮の脱落がみられた.(2)中部小腸のlabeling index(LI)は,2時間後に誘発群と対象群の間に差は無かったが,6時間後には誘発群で0.29±0.01と対照群(0.34±0.02)よりも低値を示した(p<0.05).腺窩の長さは誘発群で低値を示したが,特に2時間後の中部小腸において対照群(15.2±0.6μm)よりも誘発群(13.4±0.2μm)で有意に低下していた(p<0.05).(3)TGF-β_1の発現は対照群に比べ差を認めなかったが,HGFとIGF-1はインドメサシン投与後(3,6時間)の時間経過とともにより明瞭となった.これに対し,NGFは時間経過とともに不明瞭となった. 以上の結果より,インドメサシンは小腸腺窩の増殖能を低下させ,成長因子の発現に影響を与えるが,本剤の小腸潰瘍ではそれ以前に中部小腸の形態変化が誘発されていると考えられた.
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