研究概要 |
1.臨床的研究 クローン病患者の大腸リンパ濾胞(LF)を通常電子内視鏡および拡大内視鏡を用いて観察し,得られたLF生検標本を走査ならびに透過電顕にて観察した.さらにM細胞の存在するLF被覆上皮を抗ヒトHLA‐DRモノクローナル抗体を用いた免疫電顕によって検討した.その結果,拡大観察にて紅暈を伴うが粘膜欠損を認めないLFでも走査電顕上150〜200μmのびらんを認めることが判明した.また,非活動期クローン病のLFでは,HLA‐DRは周囲粘膜上皮で弱くLF被覆上皮でやや強く呈示されたのに対し,活動期クローン病のLFでは,周囲粘膜上皮と同様に著しいHLA‐DRの呈示を認めた.以上の成績より,内視鏡観察での紅暈を有するLFはクローン病の最も初期の変化と考えられ,M細胞の存在するFF被覆上皮からアフタ様病変が始まることが想定された. 2.実験的研究 インドメサシンを経肛門的にラットの大腸に局所投与することによって作製される小腸縦走潰瘍モデルの初期病変を,(1)走査電顕による絨毛の変化,(2)BrdUを用いた酵素抗体法による腺窩 k増殖能,(3)RT‐PCR法による増殖因子の発現,の3点から検討した.その結果は以下のように要約される.(1)インドメサシン投与1時間後に腸間膜付着側に絨毛のねじれを認めた.(2)中部小腸の腺窩増殖能は2時間後には対照群となる有意差を認めなかったが,6時間後には有意に低下していた.(3)インドメサシン投与後3,6時間における増殖因子の発現は,TGF‐β_1は不変,HGFとIGF‐1は明瞭,NGFは不明瞭となる傾向を認めた.以上の成績より,インドメサシンは小腸腺窩の増殖能を低下させ,成長因子の発現に影響を与えるが,本剤の小腸潰瘍ではそれ以前に中部小腸の形態変化が誘発されていると考えられた.
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