研究概要 |
血管新生抑制剤(TNP-470)の投与により肝細胞癌の増殖、転移が抑制されるか否かを検討し、以下の知見を得た。 1.コリン欠乏アミノ酸食投与ラット肝癌モデルを用いた検討 ラットにコリン欠乏アミノ酸食を投与すると3ケ月で肝硬変、6ケ月から1年で肝細胞癌が発生すると言われている。今回は肝細胞癌が発生しはじめる7ケ月から1年までTNP-470を投与した群(A群)、その対照としてTNP-470非投与群(B群)、肝細胞癌が発生したと考えられる1年から4ケ月間TNP-470を投与した群(C群)、その対照群(D群)を用い、以下の検討をした。 1)A〜D群間での肝細胞癌発生率、腫瘍径、前癌病変の発生数の比較 前癌病変の発生数はA,B群、C,D群間で差が認められなかった。肝細胞癌の発生率、腫瘍径はB群に比べA群、D群に比べC群で有意に抑制された。 2)A〜D群間での非癌部肝硬変組織、肝機能の比較 TNP-470投与群では非投与群に比べ体重減少が認められたが肝硬変組織、肝機能にはA〜D群間で差異は認められなかった。 3)A〜D群間での肝細胞癌の増殖能、アポトーシス率、血管新生の比較 肝癌細胞の増殖能はA〜D群間で差は認められなかった。アポトーシスはB群に比べA群、D群に比べC群で増加していた。肝細胞癌内の血管はB群に比べA群、D群に比べC群で少ない傾向にあった。 4)肺への転移は肺転移を生じた例数が少なかったためA〜D群間で比較できなかった。 2.マウス肝癌細胞株(MH-134M)を用いた検討 マウス皮下に腫瘍結節が生じるものの肺転移は観察されなかった。 3.in vitroにおける検討 ヒト肝癌細胞株と血管内皮細胞のco-culture群では、内皮細胞単独cultureに比べ内皮細胞の増殖が強かった。TNP-470投与により血管内皮細胞の増殖は抑制されたが、肝癌細胞の増殖は抑制されなかった。 以上より血管新生抑制剤(TNP-470)は肝細胞癌における血管新生をより抑制することにより肝細胞癌の増殖を抑制しうることが示唆された。
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