研究概要 |
インターロイキン10 (IL-10)のin vitroでの各種サイトカイン産生におよぼす影響をみるため、炎症性腸疾患(クローン病、腫瘍性大腸炎)患者から腸粘膜組織および末梢血単核細胞を採取し、これに種々の濃度のリコンビナントIL-10を添加し、24時間培養後の上清中のIL-1、TNFα、IL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1ra)濃度をELISAキットにより測定した。その結果、上清中のIL-1, TNFα濃度は添加したIL-10の用量依存性に低下し,逆に、上清中のIL-1ra濃度はIL-10の用量依存性に増加することが明らかとなった。また、炎症性腸疾患患者の腸粘膜分離単核細胞を用いても上記と同様の検討を行う予定であったが、これについては、実験に必要な細胞数を得るだけの組織量が生検材料ではなかなか得られず、まだ行えていない。平成7年度に行った炎症性腸疾患の検体を用いたin vitroでの実験により, IL-10が炎症性サイトカインであるIL-1, TNFα産生を抑制するとともに、抗炎症性サイトカインであるIL-1ra産生を促進することにより、強力な炎症抑制効果を発揮し、炎症性腸疾患の治療薬として利用され得る可能性が示唆された。現在、同様の実験系を用いて、リコンビナントIL-10投与によるIL-1、TNFα、IL-1ra発現のmRNAレベルでの変化についても、Northern blot法を用いて解析中である。平成8年度は,炎症性腸疾患の実験モデルであるトリニトロベンゼンスルフォン酸惹起性腸炎を用いて、IL-10のin vivoでの投与効果についての検討を行う予定である。
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