平成7年度報告 ラット線維肝および急性肝壊死巣におけるTGFβ1の発現と肝再生の局在相互関係を下記の如く検討した。 Fisher系雄性ラットを用いてブタ血清(0.5ml/100g BW)の長期投与により肝線維症モデルを作成した。それらの一部には更に四塩化炭素(CC14;0.1ml/100g BW)を一回投与し急性肝壊死を合併させた。2/3部分肝切除後、TGFβ1に対するポリクローナル抗体を用いてその発現を検討すると、切除前では線維隔壁の近傍に散見されたTGFb1は、切除後48時間をピークとし増強された。一方、CC14急性肝壊死巣では、TGFβ1はその周辺部に強く誘導され、一部はKupffer cellと思われる細胞にも発現されていた。この際、BrdUを用いてS期肝細胞の局在を検討してみると、血管周囲以外の線維隔壁近傍領域では再生が乏しいことが判明した。以上より、線維肝における肝再生抑制の一部にTGFβ1が関与していることが推定されたが、血流を介した増殖因子のsupplyの側面からの検討も不可欠であると推察された。 したがって、次年度はラベルしたHGFを用いた肝潅流実験を行い、線維肝での増殖因子のsupplyと細胞外マトリックスへのtrapの問題にアプローチしたいと考える。また、TGFβ1の産生細胞の同定と局所での活性化機序にもアプローチすべく、まず最初にそのmRNAレベルでの局在を検討する。
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