研究概要 |
ラット線維肝および急性肝壊死巣におけるTGFβ1の発現と肝再生の局在相互関係を下記の如く検討した。 Fisher系雄性ラットを用いて、ブタ血清(0.5ml/100gBW)の長期投与により肝線維症モデルを作成した。それらの一部には,更に四塩化炭素(CCl_4;0.1ml/100gBW)を一回投与し急性肝壊死を合併させた。2/3部分肝切除後、transforming growth factor(TGF)β_1に対するポリクローナル抗体を用いてその発現を検討すると、切除前では線維隔壁の近傍に散見されたTGFβ_1は、切除後48時間をピークとし増強された。この発現の程度は、対照群に比して、有意に高かった。一方、CCl_4急性肝壊死巣では、TGFβ_1はその周辺部に強く誘導され、一部はKupffer cellと思われる細胞にも発現されていた。この際、BrdUを用いてS期肝細胞の局在を検討してみると、血管周囲以外の線維隔壁近傍領域では再生が乏しいことが判明した。以上より、線維肝における肝再生抑制の一部にTGFβ_1が関与していることが推定された。 このTGFβ_1を介する肝再生抑制の生体内の情報伝達の詳細を解明するが今後の課題である。したがって、TGFβ_1の産生細胞の同定と局所での活性化機序にアプローチすべく、まず最初に、そのmRNAレベルでの局在を検討し、in vitroでtranscell cultureの方法で、TGFβ_1の活性化を起こす原因となる細胞とその活性化機序を細胞外マトリックスとの関係で解明する実験を準備している。
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