原発性肺癌薬剤耐性の臨床検体での検討のために、まず数種類の肺癌培養細胞株を用いて基礎的な検討を行った。培養細胞株ではp-glycoproteinの発現はほとんどみられなかった。またcell cycle、doxorubicinやetoposideに対するIC_<50>、DNA topoisomerase II content (Western blot assay)、topo II activity (catalytic assay)を測定し、さらに臨床検体応用に向け、anti-topoisomerase II antibodyによる免疫染色を行った。免疫染色法による染色性とtopo II content、topo II activityには弱い相関を認めたが、IC_<50>とは有意な関係を見いだせなかった。以上のように少量の検体での観察が可能なp-glycoprotein、topo IIに対する免疫染色法は確立したが、客観性のある染色性の評価が困難と判断された。そこで、より定性的、定量的評価の可能な共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて、免疫蛍光染色法による検討を行った。その結果、薬剤の感受性と薬剤の細胞内分布、topo IIの細胞内分布には関係があり、耐性細胞で薬剤の胞体内分布とそれに伴い核内への集積低下、また特にetoposide耐性細胞では核内蛋白であるtopo IIの胞体内への異常分布が明らかとなった。共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いる本方法は臨床検体においても十分評価が可能で、新しい薬剤感受性の測定項目に成り得ると考えられた。そこで、癌性胸膜炎患者の胸水検体を用いて、胸腔内への抗癌剤注入による局所治療効果と薬剤の腫瘍細胞内分布を比較検討したところ、薬剤の核内集積の低下を示す症例に癌性胸水のコントロール不良例が多く、臨床検体での本方法の有用性が示された。
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