本研究の目的は、喘息死発症と呼吸困難感及び低酸素換気反応の関係、さらには頸動脈体機能低下との関係を明らかにすることである。 我々の平成7年度の研究において、これまでに次のような研究結果を得ている。 1)Positoron Emission Tomography(PET)による抵抗負荷時大脳賦活部位の測定。 健常人及びNear-Fatal-Asthma患者それぞれ6名において、18FDGを静注後30cmH_2O/liter/secの外部抵抗負荷呼吸を30分間行なわせ、大脳賦活部位をグルコース代謝を用いて測定した。健常人に於いてはこの負荷により、帯状回、前運動野、視床等が賦活された。他方呼吸困難感の低いNear-fatal asthma患者では同部位での18FDG取り込みが低下する傾向が見いだされ、呼吸困難と同部位の活動関連しているものと考えられた。 2)抵抗負荷ラットに於けるC-fos oncogene発現の測定。 気管カニューレを挿入したラットに覚醒下でカニューレを通して外部抵抗を20分間負荷した後、脳を摘出。この脳標本を用い、脳の神経活動増強と関係が知られているc-fos oncogene発現をin situ hybridization (c-fos mRNA測定)および免疫染色法(c-fos蛋白測定)にて測定した。測定は頸動脈体摘出群及び非摘出群で行なったが、摘出群ではc-fos発現が大脳辺縁系、視床下部等の部位で低い傾向があり、呼吸困難感の感受性と頸動脈体機能が深く関係しているものと考えられた。
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