研究概要 |
本研究の目的は、喘息死発症と呼吸困難感及び低酸素換気反応の関係、さらには頸動脈体機能低下との関係を明らかにすることである。 我々の平成8年度の研究において次のような研究結果を得ている。 1)呼吸刺激剤ドキサプラムの換気応答に対する効果。 健常人7名において呼吸刺激剤であるドキサプラムを点滴静注(2.0mg/kg/hr)投与中に低酸素換気反応および低抗負荷時の呼吸困難感の測定を行い、プラシーボとして生理食塩水を点滴静注投与した時と比較した。ドキサプラム投与時には低酸素換気反応は増加し低抗負荷時の呼吸困難感も有意に増加した。更に抵抗負荷時の呼吸困難と低酸素換気反応には有意の相関があり、頸動脈体機能は呼吸困難の発生要因として関係している可能性が考えられた。この結果はNear-fatal asthma患者では呼吸困難と低酸素換気反応が低下しているという、我々の以前の報告(NEJM330:1329,1994)と一致しており、頸動脈体機能低下が喘息死の要因となっている可能性を示している。 2)抵抗増加時の呼吸停止に対する頸動脈体の役割。 頸動脈体摘出群及び非摘出群のラットをウレタン麻酔後自発呼吸下にカニューレを通してメサコリンを吸入させ、抵抗(食道バルーン及び気流速度のより肺抵抗で測定)を呼吸停止を起こすまで上昇させた。頸動脈体摘出群では低濃度のメサコリンで低酸素血症となり呼吸停止を起こしやすい傾向が見られた。このことは低酸素換気反応の低下が喘息発作時呼吸停止の重要な要因であることを示している。
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