1)肺胞マクロファージのシグナル伝達経路におけるサイクリックADPリボース(cADPR)の関与。気管支肺胞洗浄で得られたラット肺胞M_φを材料とし、パッチクランプ法と分子生物学的手法により次のことを明らかにした。(1)肺胞M_φはATPに反応して、細胞内遊離のカルシウム(Ca^<2+>)に依存するカリウムイオン(K^+)電流(I_K)を発生した。(2)細胞内にイノシトール三リン酸(IP_3)またはcADPRを投与したところ、いずれに対してもM_φは一過性のI_Kを発生した。しかし、IP_3を投与したM_φはATPにも反応してI_Kを発生させたが細胞内cADPR投与に一度反応した細胞は引き続く細胞外ATPには反応しなかった。cADPR拮抗剤8-amino-cADPRを前投与したM_φはATPに反応しなかった。(3)RT-PCRにより肺胞M_φはcADPRの合成・分解酵素であるCD38のmRNAを発現した。また、M_φのホモジネートはcADPRを合成・分解する酵素活性を示した。-以上より、肺胞M_φのATPに対する反応にはcADPRがセカンドメッセンジャーとして働いていることが示された。 2)家兎気管支炎モデル気道上皮に出現する特異的電流。亜硫酸ガス曝露気管支炎モデルウサギを材料に、電気生理学的および分子生物学的手法により次のことを明らかにした。(1)モデル上皮は、正常に比して有意な電気抵抗の増加と基礎電流値の低下および管腔側陰性の電位差の顕著な増大を示した。(2)細胞外ATP、イソプロテレノール及びアデノシンに対して気管支炎モデルは正常には認められなかった新たな塩素イオン電流を発生した。(3)気管支炎上皮はNorthern blot analysisにより強いCFTR mRNAの発現を示し、免疫組織染色により、モデル上皮細胞内にCFTR蛋白の明瞭な発現を認めた。…健常ヒト気道上皮においてCFTRは光顕レベルでは上皮細胞そのものにはほとんど認められないことが明らかにされている。本研究で示された気管支炎モデル上皮におけるCFTRの遺伝子及び蛋白さらに機能の発現は炎症性気道上皮の基本的な病態を明らかにするものである。
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