前年度に引き続き、ライノウイルス感染による気道上皮細胞の炎症性サイトカイン・接着分子ICAM-1の合成とライノウイルス感染制御について研究を行った。研究実績は以下の通りである。 1)ヒト剖検気管から粘膜下腺を酵素的に単離して培養し、ライノウイルスを感染させた。培養液および粘膜下腺細胞にライノウイルス増殖を確認した。培養液に放出されたサイトカインのうち、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α、GM-CSFがライノウイルス感染後に増加した。また、ICAM-1mRNAをノザンブロット法で測定し、ICAM-1の局在を免疫染色法で調べた。ライノウイルス感染はICAM-1mRNAとICAM-1産生陽性細胞をいずれも増加した。抗IL-1βはICAM-1増加を抑制したため、ライノウイルス感染後のICAM-1増加におけるIL-1βの関与を示唆した。気道粘膜下腺のサイトカイン合成に関してこれまで研究が行われておらず、今回初めて明らかになった。また、ウイルス感染による気道炎症における粘膜下腺の関与が示唆された。 2)これまで一酸化窒素(NO)の抗ウイルス作用が知られているが、NO合成酵素と類似の生理活性をもつヘムオキシゲナーゼ(HO)の作用は知られていない。ヘミンで培養ヒト気管上皮細胞を刺激すると、刺激後8時間で誘導型HO-1のmRNA合成、蛋白合成、および酵素活性が亢進した。この時に、ライノウイルスを感染させると培養液に放出されるライノウイルスが減少した。ストレス蛋白であるHO-1の気道上皮での合成亢進と抗ウイルス作用が初めて明らかになった。 今後ともウイルス感染誘発気管支喘息の病態と治療法について、研究を進める予定である。
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