ヒト羊膜を使用した気道上皮細胞の三次元培養システムを開発し、検討してきたが、この培養系でモルモット気道上皮細胞と線維芽細胞とのco-cultureを行い、両細胞の形態変化を検討した。ヒト羊膜を用いた三次元培養装置の上皮細胞側に、モルモット気管より酵素的に得た上皮細胞を蒔いた。3週間後、装置を反転し、上皮剥離後の気管から組織片培養によって得た線維芽細胞を、対側の絨毛膜側に蒔き、co-cultureを開始した。培養終了後、光顕、電顕的に形態を評価した。上皮細胞の単独培養では、最長31日間の培養で一部に線毛細胞を持つ単層立方上皮を示した。また、線維芽細胞は単独培養では羊膜の絨毛膜側に単層に生着した。上皮細胞単独培養21日間、co-culture10日間の場合、上皮細胞と線維芽細胞が著名に多層化し、上皮では基底細胞、線毛細胞に加えて、粘液分泌顆粒をもつ杯細胞様細胞が出現した。これは、in vivoのpseudostr atified ciliated epitheliumに非常に近い形態であった。また、繊維維芽細胞の増殖に伴い羊膜の菲薄化がみられた。ヒト羊膜を用いたモルモット気道上皮細胞と線維芽細胞とのco-cultureにより、気道上皮細胞は線維芽細胞に対して細胞増殖的に、また線維芽細胞を活性化させることによりcollagen分解、新生を亢進させたと推定される。一方、線維芽細胞が存在することにより気道上皮細胞に対して増殖的に、また分化亢進性に作用したことが推定された。特に、上皮ではin vivoのモルモット気管上皮に非常に近い再構築を示した。上皮-間葉相互作用による形態形成において、細胞外マトリックス、cell-cell contact、液性因子などの仮説があるが、今回の結果は、少なくとも一部は羊膜による細胞外マトリックスの作用と気管上皮細胞及び線維芽細胞からの液性因子の遊離により生じたと推察された。
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