研究概要 |
肺癌は、初期の化学療法には比較的反応するものの、徐々に悪性度、治療抵抗性を獲得し、最終的に患者を死に至らしめる悪性腫瘍である。すなわち、後天的に獲得する悪性度のメカニズムを解明することは肺癌を治療するうえで特に重要と考えられる。しかしながら、肺癌で高頻度に変異の見られるp53、Rb遺伝子や欠失のみられる染色体3番単腕は、早期肺癌や前癌病変でもすでにみられることより、肺癌の発生に関与し、後天的に獲得する悪性度や治療抵抗性とは直接関わりが少ないと考えられる。当初、我々は染色体5番長腕(5q)の欠失が早期癌に比べ、進行性肺癌でより高頻度であることから、肺癌の進展に関与する癌抑制遺伝子が5q上にあると考えた。5qの肺癌における共通欠失領域は2ケ所で、5q21と5q33-35であった。5q21の欠失領域約3Mbを12個の人工酵母染色体YACでクローン化し、その一部よりコスミドライブラリーを作成、クローンを整列化し、cosmid contigを作成した。付近にマッピングされているSTSや多型マーカーを用い、ゲノム地図を作成した。この領域より、exon-trapping,cross-spccies hybridization,Northern blot,cDNA database等により、3種類のtranscriptional unitを単離した。種々のcDNAライブラリースクリーニングにより、1つはほぼ全長が単離され、その塩基配列より、ribosomal protein familyに属する遺伝子であった。他2つは未だ全長は単離されていないが、塩基配列からは既知の遺伝子とは明らかな相同性はなかった。現在、これらの遺伝子の全長をクローニングする一方、肺癌における発現、構造異常を検索中である。
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