研究概要 |
肺癌細胞が産生するサイトカインとしてTh2由来サイトカイン(IL-4,IL-10,IL-13)に注目し、宿主のマクロファージ系細胞との相互作用について主たる検討をおこなった。 腫瘍増殖局所にはマクロファージ浸潤が見られることが多いことから、その調節機構を解析する目的で、ヒト単球および肺胞マクロファージのmonocyte chemotactic protein-1(MCP-1)産生におけるinterleukin-10(IL-10)の調節作用を検討した。無刺激単球はMCP-1を産生しなかったがIL-10は用量依存性に蛋白、mRNAレベルでMCP-1を誘導した。一方IL-4およびIL-13には同様の作用はなかった。肺胞マクロファージは構成的にMCP-1を産生したが、IL-10はこれを増強しIL-4およびLI-13は抑制した。非小細胞肺癌における腫瘍内マクロファージ浸潤の機序として肺癌細胞が産生するIL-10がマクロファージのMCP-1産生を増強しマクロファージ浸潤を促進している可能性を示唆する結果と考えられる。さらに、肺癌局所でのサイトカイン動態を反映すると考えられる癌性胸水中に関する検討にて、IL-1 receptor antagonist(IL-1ra)が検出されることを見いだした。その由来に関しては、胸腔マクロファージがIL-4等の刺激に反応してIL-1raを産生することを明らかにした。IL-1は血管新生を介して転移形成に関与する可能性があり、現在病態との関連にて研究をすすめている。
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