研究課題/領域番号 |
07670670
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
呼吸器内科学
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
安岡 劭 徳島大学, 医療技術短期大学部, 教授 (30035414)
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研究分担者 |
佐野 壽昭 徳島大学, 医学部, 教授 (80154128)
小山 一 徳島大学, 医学部, 助教授 (80109074)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | トリプシン様酵素 / 気道 / 痰 / 慢性気道疾患 / cDNA(遺伝子)のクローニング / 組換え酵素 / インフルエンザウイルス / ヘマアグルチニン |
研究概要 |
1.ヒト気道トリプシン様酵素(HAT)の生化学的性質:ヒト粘液性痰からHATを単離できた。HATは分子量約27kDaの単量体、基質特異性、プロテアーゼ阻害物質に対する態度はトリプシンに類似していた。そのN末端の20アミノ酸残基配列は既知のいずれの蛋白のそれとも一致せず、新しいトリプシン様プロテアーゼであることが明らかになった。 2.HAT遺伝子(cDNA)構造:細胞工学的手法でヒト気管DNAからHATのcDNAのcloningに成功し、その全塩基配列を明らかにした。このcDNAの塩基配列からHATの一次構造を推定した。HATには418アミノ酸残基からなる前駆体が存在し、これが活性化され成熟HATになると推定された。 3.組換えHATの生合成:2.の研究に基づき得られた前駆体HAT遺伝子(全長cDNA)のバキュロウイルス/昆虫細胞での発現を構築し、昆虫細胞内に活性型HATの発現がみられた。 4.呼吸器系におけるHATの局在:HATに対する抗体を用いた免疫組織化学的研究で、HATは気道粘膜下の漿液腺細胞や粘膜下分泌腺の導管内の上皮細胞から気道粘膜面に分泌されると推定された。 5.HATの活性化機構:ヒト気管抽出液に前駆体HATが含まれていることが判明した。この前駆体はautocatalyticな機序で限定分解され、活性型(成熟HAT)に転換されることを示唆する成績が得られた。 6.HATの生物作用:インフルエンザウイルスはその表面タンパクであるヘマグチニン(HA)がトリプシン型のプロテアーゼの作用によりHA_1とHA_2に開裂することにより活性化され、感染性を獲得する。トリプシンを対照としてHATに本ウイルス活性化作用があるか否かを検索した。しかし、HATは単独ではHA分解作用を示さず、in vitroで本ウイルスの活性化作用を示さなかった。しかし、HATの基質特異性が塩類の存在や有機溶媒処理で変化する成績が得られており、HATの活性化機構を充分に解明した後にHATにインフルエンザウイルス感染における意義を再検討する必要があると考えられる。
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