1.トリコスポロノ-シスの臨床的現況の把握のため、熊本県下主要病院にアンケート調査した結果、6症例の敗血症を認めたが、起炎菌としての認識不足から廃棄された例や、その他の酵母から分離していない施設、全くトリコスポロンの真菌学的特徴の知識がないため不明とする施設が存在することが明らかとなり、本症の啓蒙重要性が確認された。 2.PCR法を用いた菌の同定法の確立がされ、診断のみならず、遺伝子学的トリコスポロンの同定が可能となった。 3.トリコスポロノ-シスの病態を解析するためにcyclophosphamide(CP)による トリコスポロノ-シスモデルマウスを作成し、その病理学的検討、臓器中の菌数、サイトカインの動態について検討した。その結果、1)CP投与により好中球が減少したウスにT.asahiiを感染させるとCP非投与マウスに比し著明に致死率が上昇した。2)この好中球減少Trichosporon感染マウスは末梢血および肺組織浸潤好中球の減少、感染初期の組織中菌量の増加、BALF中のTNF-αの著明な上昇を認めた。3)この好中球減少Trichosporon感染マウスにrhG-CSFを投与することにより、末梢血および肺浸潤好中球の増加、感染初期の組織中菌量の減少を認めるともにち、BALF中のTNF-αが減少し、致死率が改善した。一方、rhGM-CSFでは末梢血の好中球の増加を認めるにも拘らず、BALF中のTNF-αの増加を抑制せず致死率の改善も認められなかった。4)このTNF-αの産生細胞を免疫組織学的にrhG-CSFを投与群と非投与群で比較検討した結果、非投与群でマクロファージに強い陽性像を認めた。5)anti-TNF-αの抗体を用いて血清中のTNF-αレベルを抑制しても生存率の改善が見られず、この時肺局所のTNF-αレベルはほとんど抑制されなかった。 以上より、Trichosporon感染症における肺傷害にTNF-αが関与していることが示唆され、G-CSFはこの病態を改善するがGM-CSFは有効ではないことが明かとなった。
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