研究概要 |
肺癌におけるPeripheral airway markerであるsurfactant protein A(SP-A),surfactant protein D(SP-D)およびClara cell 10 kilodaton protein(CC10)の免疫組織学的発現を検討した結果,肺腺癌ではSP-Aが53%,SP-Dが55%,CC10が35%に発現を認め,分化度ではいずれもその発現には有意な差は認めなかった。肺扁平上皮癌ではSP-Aは陰性がだ,SP-DとCC10では,低頻度に発現を認めた。肺小細胞癌ではSP-A,SP-D,CC10の発現はいずれも陰性であった。SP-AとSP-Dは消化器癌,乳癌,子宮癌でいずれも陰性であった。また,癌性胸水におけるSP-AとSP-Dの定量結果ではSP-Aは肺腺癌の47%が高値であり,SP-Dは肺腺癌の38%,扁平上皮癌の25%が高値であった。しかし,CC10は肺腺癌における癌性胸膜炎においては全例低値であった。 また,stage Iの肺腺癌44例において,CC10は16例(36%)に発現を認め,CC10陽性16例では術後再発が2例(13%),CC10陰性28例では術後再発が12例(43%)が認められ,CC10陽性において有意に術後再発が低頻度であった。また,組織学的にも肺腺癌の間質誘導はCC10陰性例に比較し,CC10陽性において少なかった。肺腺癌において,CC10は予後因子となる可能性が示唆された。今後,CC10の肺腺癌における機能的意義をさらに検討していく予定である。
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