研究概要 |
目的:慢性呼吸不全の患者の一部の患者では,夜間睡眠中に著しい低酸素血症が生じる。この低酸素血症は低換気によるため,酸素吸入によっても十分な改善が認めらないと考えられている。本研究では安定期のII型慢性呼吸不全患者にBiPAPによる換気補助装置を夜間睡眠中に用いることができるようにするために,夜間の低酸素血症の病態を明らかにし,BiPAPの最適な設定圧および設定方法を明らかにすることを目的にした. 方法:1.40名の慢性呼吸不全患者を対象に夜間睡眠中の動脈血酸素飽和度をパルスオキシメーターにより測定,記録した。2.10名のII型慢性呼吸不全患者を対象に,繰り返し夜間睡眠中の動脈血酸素飽和度をパルスオキシメーターにより測定・記録し,全身状態の経過との関連を検討した.3.夜間睡眠中に低酸素血症が認められた患者の一部を対象にポリソムノグラフィーに加えて,酸素飽和度,経皮電極による炭酸ガス分圧を測定した。4.睡眠のステージと各種呼吸パラメータとの関係の分析,および、換気量を検討し,夜間低酸素血症の原因を検討した.5.低換気を伴う夜間低酸素血症に対してBiPAPによる治療を試みた. 結果:1.日中の覚醒安静時の動脈血酸素分圧が60Torr以上に維持されている慢性呼吸不全患者においても夜間に低酸素血症が高頻度に認められることがわかった.2.夜間に低酸素血症を示す症例は,急性増悪を繰り返している症例に多いことがわかった.3.夜間の低酸素血症は,慢性閉塞性換気障害よりも,拘束性換気機能障害と関係が深いことがわかった.3.REM期に著しい低酸素血症が認められた.4.BiPAPの適正圧は,症例により異なり,患者と医師が納得がいくまで,種々の組み合わせの圧を繰り返し試行する必要があることがわかった.
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