気道上皮細胞には一酸化窒素合成酵素(NOS)が存在していることからNO産生が行われ粘液分泌、線毛運動などの気道上皮細胞機能に影響を与えていることが明らかになってきた。しかしその証明はNOS阻害剤を用いた薬理学的な実験結果によるもので、直接的に気道上皮細胞からのNOの産生を測定した報告はない。今回、私共はポーラログラフィー法を原理としたマイクロセンサーからの微小電流変化によりNO産生をリアルタイムに測定し、その調節機構について検討した。 1気道上皮細胞からのNO産生の測定 気道上皮細胞は無刺激でもNOを産生遊離しており、さらにisoproterenolやdibutyryl cyclic AMPでNO産生が増加した。この反応はNOS阻害剤であるL-NAMEで抑制された。一方、ATPやbradykininによる刺激ではNO産生は不変であった。従って気道上皮細胞のNO産生はcyclic AMP依存性でると示唆された。 2NOと細胞内カルシウム動態の検討 L-NAME投与にて細胞内カルシウムは有意な変化を生じなかったが、L-NAMEを前処理した後、ATPやbradykininを投与するとこれらによる細胞内カルシウムの増加反応は著明に抑制された。この反応はD-NAMEでは抑制されず、L-arginineの同時投与で回復した。またNO donarであるnitroprussideや、dibutylyl cyclic GMPを前処理するとATPやbradykininの細胞内カルシウム反応は増強した。以上より内因性または外因性NOは気道上皮細胞に対し刺激物質による細胞内カルシウム反応を調節しており、その経路としてcyclic GMPを介していることが明らかになった。
|