研究概要 |
気道上皮細胞には一酸化窒素合成酵素(NOS)が存在していることからNO産生が行われ粘液分泌、線毛運動などの気道上皮細胞機能に影響を与えていることが明らかになってきた。昨年度、私共はポーラログラフィー法によるマイクロセンサーを用いてNO産生を直接測定しその調節機構について報告した。今年度は気道上皮細胞における水分分泌に関係するClイオントランスポートに対するNOの影響について検討した。 培養牛気管上皮細胞(Air interface法)を用いてUssing chamber法でshort circuit current(lsc)を測定しClイオントランスポートに対するNOの影響について検討した。また培養上皮細胞からのNOの遊離をNO選択電極で測定した.刺激物質としてisoproterenol(ISO)、bradykinin(BK)、ATPを用いた。ISO、BK、ATPはlscを増加させた。これらの反応はL-NAME前処理により著明に抑制されたが,D-NAMEの前処理では軽度であった。またL-arginineの同時投与でL-NAMEの抑制効果は消失したが,D-arginineでは変化しなかった。培養上皮細胞からのNOの遊離は無刺激でも存在したが,ISOにより増加し,L-NAMEで抑制された.ISOによるNOの遊離はlscの増加の時間経過と一致した。一方,BK、ATPではNO遊離の増加は生じなかった。以上よりClイオン輸送において内因性NOが重要な役割を果たしているが,ISOとBK、ATPではNOによる作用機序が異なると示唆された。
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