胸膜は呼吸器系諸臓器の一部であるが、時には全身疾患の部分病態としての変化がみられる場である。また胸水の産生、吸収という固有の臓器としての性格を持つ。臓側胸膜表面構造の加齢にともなう形態学的変化について検討を行った。 [方法]C57 Blackマウス(雄)を生後1日、1週、2週、4週、3カ月、6カ月、12カ月、18カ月、24カ月、30カ月に分類し、走査電顕により胸膜表面の形態の加齢にともなう変化を検討した。 [結果]生直後には、わずかであった胸膜中皮細胞のmicrovilli(MV)は生後1週ぐらいから密度を増し、生後1カ月ほどでプラトーに達する。しかし、生後24カ月を過ぎた老年期では部分的に脱落し疎らとなり、MV自身も細く不整となった。 [考案]臓側胸膜表面の加齢変化を検討した。胸膜中皮細胞のMVに著明な加齢変化が観察された。MVの機能は不明である。MVは胸膜中皮細胞の活動機能に応じて密度を増すとされている。肺組織の加齢変化と平行して胸膜中皮細胞の活動機能が低下し、老年期でMVの脱落、退行変性が生じることが示唆された。
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