成長、発育、加齢に伴って肺には著明な形態変化が認められるが胸膜に生ずる変化については不明である。そこで、本研究では、1)成長、発育期および老齢記に生ずる胸膜表面構造の変化について検討し、2)胸膜病変としてはカラゲニンによる急性胸膜炎を作成し、胸水構成分の変化、について検討した。 1)加齢に伴う胸膜表面構造の変化 生後1日齢より30ヶ月齢までのマウスを用いて臓側胸膜を走査電顕にて観察し、以下の知見を得た。 (1)出生直後は、わずかであった胸膜中皮細胞の微絨毛(MV)は、1週齢より密度を増し、1ヶ月齢では200〜300(/μm^2)に達する。しかし、30ヶ月齢の老年期ではMVは部分的に脱落し、MVそのものも不整となった。 (2)臓側胸膜表面には生後2週齢頃より中心部にMVが粗なstoma様の構造の集簇が認められた。加齢とともに周堤が隆起し、中心部に陥凹が著明となった。 2)カラゲニンによる急性胸膜炎 ラットの右側胸腔内にカラゲニンを単回投与し急性胸膜炎を作成した。胸水は投与後3日目でピークに達し以降、減少、7日目で消失した。胸水中の細胞数は、3日で最高値に達し、気管支肺胞洗浄液(BALF)でも同様であった。細胞分画は胸水では多核白血球が主体であったのに対しBALFではマクロファージが主であった。蛋白量は胸水中では1日目がピーク以降漸減、しかしBALFでは漸増した。胸水およびBALF中のIL-8は1日目にピークを、また以降、漸減。INF-γも同様であったが、BALFでは検出されたなかった。以上よりカラゲニン急性胸膜炎モデルは胸膜病変により二次的に肺内に反応性変化が生ずるが必ずしも胸膜病変とは平行するものではなかった。
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