研究概要 |
治療前と後のbrindled mouse (BM)と夫々の正常対照マウスの脳組織における,tyrosine hydroxylase (TOH)とそのmRNA発現の局在を調べた。。 1.未治療の12日齢BMとその正常対照の5対,および治療延命8か月齢BMとその正常対照の5対,の脳組織におけるTOHの局在を免疫組織化学的方法で(SAB法,ニチレイキット)でそれぞれ調べた。その結果いずれも,substantia nigra,locus coeruleus,nucleus raphe linearis,periaqueductal gray, pontine reticular nucleusなどのニューロンが陽性反応を呈し,治療後群は治療前群より一般に免疫反応性が強かった。しかし,治療前BMおよび治療後BMとそれぞれの対照との間では免疫反応性の明らかな差は認められなかった。 2.未治療の12日齢BMとその正常対照の5対,および治療延命8か月齢BMとその正常対照の5対の脳組織におけるTOHmRNAの発現をin situ hybridization (ISH)組織化学法により調べた。その結果,未治療12日齢BMとその正常対照では共にsubstantia nigra,locus coeruleus,nucleus raphe linearis,periaqueductal gray,pontine reticular nucleusなどのニューロンの細胞質中にシグナル発現をみとめた。しかし,シグナルが一般に弱いこと,マウスにより個体差があるうえに切片における脳構造のレベルの違いに基づく差も考えられるので,BM脳と対照脳におけるこれら構造でのシグナル発現に有意の差があるかどうかについてははっきりした結論を出しえなかった。また,治療により延命させた8か月齢のBMとその正常対照の脳組織におけるシグナル発現の強さには明らかな差は認められなかった。しかし,これらは共に12日齢群(BMおよび正常対照)のそれより明らかに強いシグナル発現としてsubstantia nigra,locus coeruleus,nucleus raphe linearis,periaqueductal gray,pontine reticular nucleusなどのニューロンの細胞質(主に粗面小胞体)中に認められた。 以上の結果より治療延命8か月齢マウス脳ではTOH産生レベルが正常化していることは確認されたが,未治療BM脳でそれが有意に上昇していることを用いた方法では確認できなかった。 また第二の目的であったISH組織化学法の習熟に関しては,専用の機器とコーナーの確保が困難であったためRNase freeにすることの困難が常に伴ったが目的をほぼ達しえた。また,人体剖検材料への応用に関しては適用を厳密に選ぶ必要があることがわかった。
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