研究概要 |
福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は,先天性筋ジストロフィーに,脳奇形を伴う常染色体性劣性遺伝疾患であり、日本に多く、悲惨な病気である。本研究では、1.本症の病態解明へむけて、第9番染色体長腕31のごく狭い領域に絞りこまれたFCMD原因遺伝子を単離することと、2.この領域に存在するマーカーを使って、本症家系での出生前診断、発症前診断、保因者診断を行うことを目的として、以下のことを明らかにした。 1.FCMD遺伝子領域内に存在する9q31のマーカー、mfd220との間に連鎖不平衡を見い出し、FCMD遺伝子をこのマーカーの近辺、約1Mb以内に追い込み、さらにmfd220を含むYACコンティグを作成。 2.連鎖不平衡マッピングによりFCMD遺伝子はD9S2107を含んだ約100kb以下の領域に存在する可能性を報告し、この周辺のコスミドコンティグとEcoRI制限地図を作製。 3.新たにE6、J7のマーカーを単離し、ハプロタイプを調べ、創始者ハプロタイプを示すFCMD染色体は80%、患者の95%がこのハプロタイプのホモまたはヘテロであった。以外にあと数本のFCMDハプロタイプが同定され、日本のFCMD変異は、数回起きた。創始者ハプロタイプを不完全に持つFCMD染色体の解析から、遺伝子はE6から動原体側のごく近い所に存在すると予想。 4.さらにこの予想した所に、患者DNAのほとんどが約3kbの「挿入」を示すプローブを見い出した。一方、無関係な正常人では、この挿入は88人中1人にヘテロで認められたのみで、日本人のFCMD保因者頻度によく一致していた。この挿入はFCMDの原因自体に密接に関与している可能性があるとともに、診断にも使用できる。 5.現在までに10数家系の出生前診断を行い、全例正診である。その他数十家系の遺伝子診断を行った。もちろん遺伝子診断のガイドラインを満たしている。また出生前診断における胎児剖検例の検討から、FCMDの脳奇形はglia limitans-基底膜複合体の亀裂が一因。
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