研究概要 |
ALS患者21例における皮質脊髄路の興奮性変化を大脳磁気刺激法を用いて検討した.第一背側骨間筋より弱い随意収縮宿下に単一運動単位電位記録を行いながら約100回の磁気刺激を加え,運動単位の発火確率の変動を刺激点を基準とした Peristimulus Time Histogram(PSTH)を作成した.正常ではdirect corticospinal tract由来の潜時20数msecでの著明な発火確率の上昇(Primary Peak)がみられた.ALSでは特にその初期例においてこの部分での発火確率が有意に増加していた.このことはALSで脊髄前角ニューロンにおいて大きなEPSPが形成されることを示しており,この部分におけるニューロンあるいはシナプスの興奮性が上昇しているものと考えられる.また一部の例では比較的同期性の良い第1ピーク(Primary Peak)に加え,潜時約30msecの持続時間の長い第2ピークが出現していた.この結果はALSでは磁気刺激により皮質延髄脊髄路,proprioceptive neuronなどの多シナプス系が賦活されたと考えた.以上の所見はいづれもALSとくにその初期例で皮質脊髄路の興奮性が異常であることを示唆する.
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