研究概要 |
I)培養小脳顆粒細胞に対するMT-2、HCT-1、W7TM-1、HAM患者より分離したT-cellなどの培養上清の細胞障害性を、MTT法、fluorescin diacetate法による生細胞数の測定し解析したが、MT-1、MT-2では神経細胞障害性が容量依存性に見られたものの、HAM患者末梢血Tリンパ球、W7TM-1では障害性は確認できず、tax遺伝子の発現が強いものに障害性が強い可能性が示唆されたがHAMの患者由来リンパ球で確認できなかったことから、HAM発症のメカニズムとの関連は不明であった。 II)神経系細胞への感染の有無を確認するため、HTLV-I感染ヒトTリンパ球細胞株であるHCT-1(HAM患者髄液由来CD4陽性T細胞株,Nakamura et al.,1989)、MT-2およびHTLV-I感染ラット由来(WKAH)Tリンパ球細胞株であるW7TM-1と混合培養した。これらのアストロサイト、ミクログリアはHTLV-Iを発現するが、これらの細胞を抗ヒトTcellレセプター抗体で染色すると、高頻度に染色されたことからMT-2自身が培養フラスコ面、あるいは培養アストロサイトと直接接着する可能性や、細胞融合が起こっている可能性が考えられた。 そこで、HTLV-Iウイルスのtax部位をサイトメガロウイルスのプロモーターにつないだ発現ベクターを用いた。またHTLV-IのLTR部分をプロモーターとして蛍光発色蛋白(GFP)を作成し、cotransfectすることでtax発現のマーカーとし、in vitroのtransfectionでtax遺伝子を発現させて、tax遺伝子の神経系細胞に及ぼす影響、神経細胞障害のメカニズムを検討することとした。リポフェクトアミン法によるtransfectionではヒト・マクロファージ細胞株U937細胞とラット・初代培養ミクログリアへのtax遺伝子導入を試み、U937細胞では活性窒素(NO)の産生はtax遺伝子導入により亢進することが明らかになった(未発表データ)。今後はこれらのtax遺伝子導入細胞の機能変化・小脳顆粒細胞に及ぼす影響を検討する予定である。
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