多発性筋炎の病因として自己免疫やウイルス感染等が重視されている。HIV感染によるAIDS患者において筋炎が合併することが報告され、レトロウイルスと筋炎の関係が注目されている。HTLV-Iはin vitroでは種々の細胞に感染することが知られており、筋内においてCD4(+)リンパ球のみに感染しているのか、あるいはmacrophageなどの他の細胞にも感染しているのかを明らかにすることは発症機序を考える上で重要である。今年度はHTLV-I感染細胞の種類を明らかにすべく表面マーカーを用いた免疫組織化学とPCR in-situ hybridizationの二重染色を行った。対象はHTLV-I陽性多発筋炎5例、HTLV-I陰性多発筋炎5例、HAMと多発性筋炎の合併例5例、筋炎を認めず神経性筋萎縮を呈するHAM3例の各生検筋、及びATL一例の剖検筋について検討した。まずイムノゴールドシルバ-染色法(IGSS)を用いて各種細胞表面マーカーにたいする免疫組織化学を行い、次にPCR in-situ hybridizationを行った。probeにはHTLV-Iに特異的なtax領域の40塩基のオリゴヌクレオチドを合成し、ジゴキシゲニン標識を行った。その結果ほとんどのHTLV-I陽性細胞にはCD4陽性のTリンパ球であることが明らかになった。しかしマクロファージについては、全くHTLV-Iが存在しないのか、ごく少数のものには存在するのかについての最終的な結論を得るには至らなかった。
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