HTLV-I保因者にみられる炎症性筋疾患におけるHTLV-I感染細胞の種類を明らかにすべく表面マーカーを用いた免疫組織化学とPCR in-situ hybridizationの二重染色を行った。対象はHTLV-I陽性多発性筋炎、HTLV-I陰性多発性筋炎、HAMと多発性筋炎の合併例、筋炎を認めず神経原性筋萎縮を呈するHAMの生検筋、及びATLの剖検筋とし、陽性対照としてATL患者のリンパ節とHTLV-I感染培養細胞であるMT-2細胞を用いた。まずイムノゴールドシルバ-染色法(IGSS)を用いて各種細胞表面マーカーにたいする免疫組織化学を行い、次にPCR in-situ hybridizationを行った。PCRサイクルは熱変性94℃:90秒、アニーリング45℃:2分、合成反応72℃:2分のサイクルを40回行った。primerはHTLV-I taxの領域を増幅可能な20塩基程度のものを使用し、multiple primer法を用いた。probeにはHTLV-Iに特異的なtax領域の40塩基のオリゴヌクレオチドを合成し、ジゴキシゲニン標識を行った。その結果ほとんどのHTLV-I陽性細胞はCD4陽性のTリンパ球であることが明らかになった。しかしマクロファージについては、全くHTLV-Iが存在しないのか、ごく少数のものには存在するのかについての最終的な結論を得るには至らなかった。これらの結果はパラフィン切片のみならずDNAの保存がより良好であると考えられる凍結切片においても確認された。reverse transcriptase (RT) PCR in-situ hybridizationに関しては技術的に種々の困難を伴い、現在なお研究を継続中である。また免疫組織化学とPCR in-situ hybridizationを同一切片上で行うのは技術的に種々の困難を伴い、まだ方法に改善の余地がある。免疫染色後にはPCR in-situ hybridizationの反応がある程度抑制されることは不可避であり、いかに検出感度をあげるかが今後の問題である。
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