異常異常抗酸化酵素(SOD)遺伝子の発現が、他の遺伝子発現におよぼす影響について患者線維芽細胞を用いて検索した。熱ショックによって生ずるスーパーオキシドの除去が患者細胞では円滑に行なわれないために、患者線維芽細胞に蓄積すると仮定すると、それに反応して遺伝子発現が影響をうけることが十分に考えられる。変異SOD酵素cDNAを家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)患者抹消リンパ球RNAからRT-PCR反応によって増幅してクローン化したものを、RSVLTRをプロモーターとするpRc/RSVプラスミドベクターに組み込み、リポフェクチン法によってラットPC12細胞に導入した。その結果15%程度の導入率で遺伝子導入に成功し、ネオマイシン耐性によって安定クローン細胞を得た。ノーザンブロット、およびウエスタンブロット法によって変異SODの導入、およびその遺伝子発現を確認した。しかし、6カ月にわたる細胞培養では、低FCS血清濃度、あるいはCO2濃度を変化させても、明らかな形態変化はなかった。そこで比較的短時間の熱ストレスを患者および対照の線維芽細胞に加え、その後7時間の培養を行い細胞から抽出したmRNAを鋳型としてランダムプライマーを用いて逆転写酵素反応により単鎖cDNAを合成した。35dCTPを基質として加え、PCR法によって2本鎖cDNAを増殖し、放射化したものをゲル電気泳動後、オートラジオグラフィーを行い、対照細胞間での異なるバンドをゲルから切り出して再度PCRを行い塩基配列を決定した。つぎに線維芽細胞cDNAライブラリーをスクリーニングしておよそ1300塩基対のDNA断片を得ている。この配列はいまだ報告はなく、新しく遺伝子断片と考えられる。
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