脊髄小脳変性症(SCD)には多くの疾患が含まれ、その内で本邦に多いオリーブ橋小脳萎縮症を中心とする孤発性小脳運動失調症と遺伝性運動失調症の計23症例と健常者9例について、Peak社製動作解析装置によって歩行の二次元および三次元撮影を行った.ビデオ化した映像は、(1)運動の速度、(2)加速度、(3)大きさ、(4)規則性、(5)周期性、(6)持続性、(7)方向、(8)関節の固定性、(9)振戦、(10)異常運動などの要素に分けて解析した.さらに(11)上肢と下肢の運動の同調性、(12)体軸のふれ、(13)足の運動、(14)膝の上がり、(15)踵と足指の運動の相互関係などについて検討した.コンピューターによる解析は定量的に行い、上記の結果について統計的に検討した. 健常者では上肢の振りは大きく平滑であり、リズミカルに歩行しており、SCDでは下肢の前方への振りは減少し、歩幅は小さく歩行速度が低下していた.さらに疾患によっては速度が低下して、前傾前屈姿勢がみられた.Joseph病とDRPLAでは上肢と下肢の動きに時間的ずれがあり、下肢が十分に前方へ振れてない内に上肢が後方から前方へと振れ戻るのがみられた.歩行での膝関節角度を健常者と比較して、いずれのSCDの疾患でも低下していた.上肢の振りの大きさの定量化によって、手関節部の歩行での上下方向の変位の定量で、いずれも有意に減少した.歩行速度も有意に低下した. 三次元歩行解析では、SCD14症例と健常者6例について検討した.その結果は、SCDでは上記の二次元解析の結果に加えて、体幹の動揺が大きいのが認められた.さらに引き続き歩行以外でも同様な解析を行い、さらに薬効による改善とこれらの解析結果の治療前後での比較を平成8年度に行う.
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