脊髄小脳変性症(SCD)の23症例と健常者9例について、Peak社製動作解析装置により歩行の二次元および三次元解析を行い、健常者では上肢の振りは大きく平滑であり、リズミカルに歩行しており、SCDでは下肢の前方への振りは減少し、歩幅は小さく歩行速度が低下していた.さらに疾患によっては速度が低下して、前傾前屈姿勢がみられた。Joseph病とDRPLAでは上肢と下肢の動きに時間的ずれがあり、下肢が十分に前方へ振れてない内に上肢が後方から前方へと振れ戻るのがみられた.歩行での膝関節角度を健常者と比較して、いずれのSCDの疾患でも低下していた.上肢の振りの大きさの定量化におって、手関節部の歩行での上下方向の変位の定量で、いずれも有意に減少した。歩行速度も有意に低下した。三次元歩行解析では、SCD14症例と健常者6例について検討し、SCDでは体幹の動揺が大きいのが認められた. 最近は弧発性のようにみえても遺伝性であることが遺伝子工学的に明かにされた症例も多々あり、遺伝性疾患に多くの種類があることが確認されてきた。かかる観点から偶々発見されたSCA2の2症例(47才男性と44才女性)について、これまでの研究と同様にTRH-TとL-threonineの薬効のPEAKによる評価をした。結果は2症例ともにTRA-Tでは最大膝関節角度の改善は無いか軽微であり、手の振りは軽度の改善を示し、最大歩行速度はほぼ変化がみられなかった。L-threonineは最大膝関節角度、上肢の振り、最大歩行速度ともにかなりの改善を示した。これは歩隔の縮小、歩幅の増加に失調の改善がみられ、膝関節角度の改善は下肢の前方への振り出しを示す。これとともに上肢の振りの大きくなったことに現われている。今回のこの遺伝性失調症の知見は、遺伝性でも失調の改善がもたらされることを証明していて、SCA2でのL-threonineの歩行に対する改善を裏付けた。
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