細胞機能測定法としてflow cytometry(FC)が盛んに用いられるようになったが、研究代表者らは全血においてFCを用いて蛍光色素を標識した抗接着分子抗体により血小板膜機能を測定する系を確立し、脳虚血患者における活性化血小板の検出と抗血小板療法の効果を検討した。方法はクエン酸ナトリウムを用いて採取した静脈血に蛍光色素FITCを標識した抗フィブリノゲン(Fbg)抗体を反応させて固定し、FCにより前方散乱と側方散乱から血小板集団を同定して蛍光強度のヒストグラムを描出し、対照(FITC標識IgG)を用いて陽性部分を設定し、血小板膜糖蛋白(GP)IIb/IIIaへのFbgの結合陽性率を測定した。 正常対照に比し脳虚血患者では高率にFbg結合陽性率の増加が認められた。また、脳虚血患者のうち、抗血小板薬、とくにチクロピジンを内服している患者群では抗血小板薬未投与群よりもADP刺激によるFbg結合率の増加が有意に低値であった。同様な方法により、蛍光色素phycoerythrin(PE)標識抗CD62p抗体を用い、PE標識IgG1を対照として、血小板膜上のP-selectin発現陽性率を検討した。P-selectinの発現は対照に比し脳虚血患者で高率で認められた。 こちらの結果より、FCによる全血中の血小板膜表面へのFbgの結合やP-selectin発現の定量的測定は脳虚血患者における生体内活性化血小板の検出と抗血小板療法の効果判定に有用な検査法であると考えられた。
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