1.パキスタン国カラチで1982-96年の間に実施した調査研究の結果とインドネシア国(IDN)とパプアニューギニア国(PNG)で1996-97年に実施した予備調査の結果と、文献に報告されている日本における実態とに基づき、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発生状況、その背景要因および危険因子の所在を、各国の間で比較した。 2.その結果、SSPEの発生に基づき、(1)15-20歳未満人口当たりのSSPEの年間発生に、カラチ2.9-14、PNG65、日本0.17-0.57の差異、(2)SSPE患者の麻疹罹患年齢の平均に、カラチ2.5(±2.1)歳、日本1.27(±1.52)歳の差異、2歳以上罹患麻疹(late measles)の割合に、カラチ65%、日本29%の差異、(3)SSPE全例の潜伏期の長さに、カラチ7.6(±3.8)歳、PNG5.3歳、日本7.4(±3.0)歳の差異、潜伏期の長さに、カラチでは2歳未満罹患麻疹(early measles)で8.5(±3.5)歳、late measlesで6.9(±3.8)歳と麻疹罹患年齢による違いがみられたのに対し、日本ではそのような違いがないという差異、(4)SSPE発病時の発熱者の割合に、カラチ25%、日本0%の差異、(5)激症例の割合に、カラチ33%、日本9%と言う差異を見出した。 3.背景要因につき、(1)麻疹予防接種導入年次にカラチ1981年、IDN1981-82年、PNG1982年、日本1967-71年(義務化1978年)の違い、(2)麻疹予防接種普及率が70%に達した年次にカラチ1985-89年、日本1989年、IDN1989-90年、PNG未到達の違い、(3)麻疹の致死率にカラチ2-6.5%、IDN0.5-15.9%、日本0.1%未満の違いを見出した。 4.危険因子の所在につき、early measles罹患者とlate measles罹患者にカラチでは同等に、日本ではearly measles罹患者にlate measles罹患者よりはるかに多量に存在する違いを見出した。
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