1.「SSPE(亜急性硬化性全脳炎)の発生を各国の間で比較する」 (1)頻度:15歳未満の人口百万当たりのSSPEの年間発生頻度はカラチでは日本の15-25倍であることを明らかにした。パプアニューギニア(PNG)ではカラチの数倍の値が報告されている。(2)SSPEにおける麻疹罹患年齢:カラチでは日本に比べその平均値が高く、0-1歳罹患者の割合が少なく、2歳以上罹患者の割合が多いことを明らかにした。(3)潜状期(麻疹罹患からSSPE発病までの期間)の長さ:SSPE全体ではカラチと日本でほとんどちがいはないが、麻疹罹患年齢の低い者では潜状期が長く、高い者では潜状期が短い傾向がカラチでみられたのに対し、日本では麻疹罹患年齢層によるそのようなちがいがないことを明らかにした。 2.「その背景要因を各国の間で比較する」 麻疹予防接種の普及度:導入年代はパキスタンが1970年代、日本が1967-71年であり、本格的導入はパキスタンにおけるEPI開始が1981年、インドネシア(IDN)におけるEPI開始が1981-82年、PNGにおけるEPI開始が1982年、日本における義務化が1978年であり、普及率の到達度は現在パキスタン80%、IDN90%、PNG48%、日本74%である。予防接種の臨床的有効性はパキスタン75%、IDN98%、日本98%とパキスタンが劣っている。 3.「危険因子の所在を各国の間で比較する」 カラチでは麻疹罹患年齢を問わず日本よりSSPE発病のリスクが大であるが、特に5歳以上での麻疹罹患者においては日本と比べきわめて大きなリスクがあることを明らかにした。
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