私は、ベーチェット病の病態の中心は好中球の機能過剰であり、ベーチェット病の特殊型である神経ベーチェット病にも好中球機能異常が存在すると考えている。その好中球の機能過剰が、アポトーシスの異常に基づくことを想定し2年にわたり本研究で、患者由来好中球とリンパ球のアポトーシスの異常の有無を解析することを目的とした。 (1)ベーチェット病患者由来好中球のアポトーシス。 本研究は比較的稀な神経型ベーチェット病患者を対象としていることから、各地のベーチェット病専門医に協力を求め、患者検体を収集する必要があった。そのために、予備実験として九州各地の専門医からベーチェット病患者血液を送付していただいた。ところがそれらから分離した好中球は採血後十数時間が経っており、既に生理的なアポトーシスが誘導され、患者好中球と健常人由来好中球の間にはアポトーシスに差は見られなかった。 (2)ベーチェット病患者由来リンパ球のアポトーシス。 好中球の機能は様々のサイトカインによる制御を受けており、それらのサイトカインはTリンパ球を始めとした免疫担当細胞由来である。(1)に示した困難さから、研究対象を好中球からTリンパ球におけるアポトーシスの検討へ転換した。患者由来リンパ球のアポトーシスは、電気泳動法によるDNAバンド形成法では健常者由来リンパ球のそれと差は無かった。そこでリンパ球におけるFas抗原とFas ligandの発現を、フローサイトメトリー法とRT-PCR法により検討した。その結果、Fas抗原とFas ligandはいずれも患者群において健常者群にくらべ有意に増加していた。 (3)神経ベーチェット病患者のアポトーシス。 研究代表者は平成7年4月に福岡大学に移動したが、神経ベーチェット病は九州では予想以上に稀であり、今回は1症例のみについてアポトーシスを検討した。その結果は(1)に示した困難さのためか、特殊型でないベーチェット病患者と同様であり、神経ベーチェット病特異的所見は得られなかった。今後も患者数の集積が必要である。
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