研究概要 |
(1)傍腫瘍性小脳変性症の神経関連遺伝子pcd17のleucinezipper領域をコード部分をプローブとして、ヒト小脳cDNAライブラリーから1,608塩基対のopenreading frameを持ち、予想される蛋白の分子量は60,460をコードする一つのcDNAクローンpcd17.2を分離した。この遺伝子にコードされる蛋白は8例の患者血清PCA-1抗体全てにPCD17.2抗原が認識されることが明らかとなり、新たな神経抗原蛋白であり、PCD17(PCD17.1)のisoform蛋白と考えられた。(2)PCD17.2のmRNAはヒト小脳において、PCD17.1mRNAの発現の局在や免疫組織化学で観察される抗原の局在と一致していた。ヒトゲノムDNAの解析から、pcd17.1遺伝子とpcd17.2遺伝子に明らかなintron構造は存在しないことから、この二つのisoform遺伝子はalternativesplicingによって生じたものではなく、ゲノム上でそれぞれの遺伝子が独立して存在している可能性が考えられた。(3)傍腫瘍性辺縁系脳炎に関連する遺伝子ple21の3つのRNA認識領のANNA-1抗神経細胞抗体に対する抗原性を検討したところ、いずれのRNA認識領域も抗体により認識されることが確認された。第3RNA認識領域については、抗体の認識に症例による差異が認められた。(4)ple21遺伝子のRNA認識領域のRNAとの結合性についてgelmobility shift assayにより検討した結果、c-mycとc-fosの31非翻訳配列に存在するAU-rich elementとの結合が証明された。(5)pcd17.1とpcd17.2遺伝子にコードされる蛋白は、homodimerizationを起こさず、異なるleucine zipper motifを有する蛋白と会合する可能性が示唆された。さらにpcd17遺伝子にコードされる蛋白はGALADNA結合蛋白とのhybrid蛋白に酵母細胞のGAL1promoterに対する転写活性があることが明らかになった。(6)ple21及びpcd17遺伝子のmRNA転写産物の小脳及び海馬における発現の局在を検討したところ、ple21の小脳と海馬、pcd17の小脳での転写産物の発現は抗原蛋白の分布と一致していたが、pcd17の海馬組織においては転写と翻訳の間に解離が存在していることが観察された。
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