家族性アルツハイマー病(以下FADと略)は遺伝的に不均一で少なくとも4種類の異なる遺伝子座位が関与することが報告されている。これらの内14番染色体に位置する遺伝座位は大多数の欧米人FADと連鎖していること示唆され、その遺伝子機能の解明はFAD発症機序を明らかにする鍵と考えられて来た。この為、我々は従来より日本人FAD家系の連鎖解析手法による14番染色体FAD領域の絞り込みを行うとともにこの領域に存在する病因遺伝子のスクリーニングを行なってきた。しかし、昨年になりカナダおよび米国のグループにより14番染色体に存在するFAD遺伝子(プイセニリン-1)と1番染色体にマップされるVolga-German型FAD遺伝子(プレセニリン-2)が相次いで明らかにされたため、これらの遺伝子について日本人家系での変異を検討した。その結果、3家系の患者のプレセニリン-1遺伝子に欧米人と同一の変異がみいだされ、本遺伝子が人種を越えてFADの病因となっていることを明らかすることが出来た。更に、孤発症例の患者にもプレセニリン-1の変異が認められ、第2の因子がFADの発症に関与している可能性が示唆された。一方、プレセニリン-2の変異は我々が解析した15家系には見いだされず、本遺伝子に関係したFAD家系は極めて稀であることが判明した。また、現在判明しているどの遺伝子座位とも連鎖していない家系が半数以上を占め異なる病因遺伝子が存在することも示唆されている。
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