研究概要 |
平成7,8年の2年間で完遂予定の本研究における本年度分の実績について概略を説明する。平成7年度において、本研究の主要な手段となる麻酔開胸犬を用いた実験システムは確立された。主な研究成果として、まず生理的心筋収縮能におよぼすNOの効果とCa^<2+>依存性心筋収縮機序の関連を明らかにし得た。すなわち、心負荷非依存性の収縮性指標である期外収縮後収縮増強(Post-extrasystolic potentiation : PESP)におよぼす、NO産生阻害薬(N^G-nitro-L-arginine (L-NA))とSRからのCa^<2+>放出を阻害するryanodineの効果を検討した。その結果、450-150msecの期外刺激によるPESPは、主にSRからのCa^<2+>放出に依存しており、ryanodineにより濃度依存性に抑制され、外因性に投与したCaCl_2によって部分的ながら回復した。L-NAは、CaCl_2による陽性変力作用を一部増強する作用を示したが、PESPのようなSRからのCa^<2+>放出に依存する現象には変化を与えず、NO系自体の心筋収縮修飾効果の本質は、SRにはないことが明らかとなった(67th AHA scientific session,59回日本循環器学会)。次に、15分間のbypass回路の遮断と開放によるmyocardial stunningを作成し、局所心筋壁厚の経時的変化から可逆的虚血後心筋収縮障害の本実験系における標準的な回復経過のdataを集積しつつある。さらに、NOの合成阻害は虚血前から適用した場合、myocardial stunningを増強するpreliminary dataを得た。
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