ナトリウム/水素交換担体(Sodium/Proton Antiporter)遺伝子のトランスジェニックマウス(Na/H過剰発現マウス)において、心筋小胞体のカルシウム貯蔵蛋白であるカルセクエストリンのカルシウム貯蔵能について検討した。8週令の雌Na/H過剰発現マウスに8%の塩化ナトリウム負荷食を8週間経口摂取させ、容量負荷心を作製した。対照は同週令のNa/H過剰発現マウスに0.3%の塩化ナトリウムを負荷したものを用いた。マウスは体重、血圧、心拍数、心電図変化を計測の後、屠殺し、心筋重量を測定した。摘出心筋をホモジェナイズし、粗心筋小胞体分画をレムリ-法により電気泳動した。これをニトロセルロース膜にブロッティングした後、カルシウムオーバーレイ法により^<45>CaCl2と反応させ、カルセクエストリンによるカルシウム貯蔵量をオートラジオグラム上で半定量した。 容量負荷心筋のカルシウム貯蔵量(92±13%)は実験群のそれと有意差を認めなかった。また、同じサンプルにより、心筋小胞体のカルシウムポンプ(SR Ca2_<+->ATPase)のカルシウム汲み上げ能についても検討しているが、現在までの計測では実験群は55±14 nmol Ca2_+/mg protein/5 minに対して、対照群では74±14 nmol Ca2_+/mg protein/5 minと容量負荷心で減少を認めた。すなわち、容量負荷心では心筋小胞体へのカルシウム汲み上げ速度は減少しているものの、心筋小胞体でのカルシウム保持能には変化が見られないことが判明した。 現在、検体数を増やして、上記の検討を重ねている。また、ノーザンブロット法でカルシウムポンプとカルセクエストリンのmRNA発現量の検討も行う予定である。
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