研究概要 |
14週齢前後のWister ratにhemin 30mg/kgを5連日腹腔内投与したラットを,最終投与の翌日に肝臓、腎臓、大動脈及び頸動脈を摘出、RT-PCR法およびwestern blotting法でHO-1のmRNAおよび蛋白レベルの検討を行った。また血圧の変化も検討した。それぞれ5-6倍の増加を確認した。次にラットにhemin 30mg/kgを5連日腹腔内投与を行いその投与開始3日目に頸動脈balloon injuryを併せておこない頸動脈局所にpluronic gelのみを塗布した(Hemin群)。hemin投与ラットにHO-1酵素の拮抗薬であるSn-protoporphyrin(TPP10mg)をpluronic gel(Taguchi J.BBRC1993)に溶解しballoon injury時に局所塗布したHemin+TPP群とした。また生理的食塩水のみの腹腔内投与を行いballoon injury部にpluronic gelのみを塗布した群を対象群とした。術語14日目に頸動脈を摘出し内膜増生の程度を病理学的に検討した。 hemin投与後に各臓器においてRT-PCR法およびwestern blotting法でHO-1のmRNAおよび蛋白レベルのそれぞれ5-6倍の増加を確認した。hemin投与群でHO-1活性の指標である血清ビリルビン値は,有意に上昇していた(0.87vs.0.20,p<0.05)。hemin群では内膜増生が対象群に比し抑制されていた。TPP投与群ではheminによる内膜増生抑制効果が有意に減弱した。今回の我々の実験検討の結果、heminの投与によりラット頸動脈のballoon injuryによる内膜増生が抑制されることが示された。hemin投与後に頸動脈局所においてもHO-1が誘導されることおよびHO-1の拮抗薬TTPが内膜増生を抑制することよりHO-1の局所での誘導が、血管の増生に対して抑制的に働いていることが示唆された。HO-1が糖尿病や動脈硬化モデルでも誘導されているとの報告もあり今後それらの病態における役割も検討が必要である。heminによる血管内でのHO-1の誘導は血管の増殖肥厚に抑制的に働いていると考えられる。
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