研究概要 |
エストロゲンの抗動脈硬化作用、特に血管に対する直接作用を明らかにする目的で以下の検討を行った。 (1)大動脈におけエンドセリン、c-fosの発現と増殖に対するエストロゲンの影響;まず卵巣摘除を施行したラット(OVX)、卵巣摘除にエストロゲンを補充したラット(OVX+E)および対照群の雌ラット(Sham)から大動脈を摘出し、組織中のエンドセリン濃度、c-fosm RNA発現量を検討した。その結果、エンドセリン濃度、c-fosm RNA発現量ともに、OVXで他の2群に比べて高値を示した。また^3H-thymidine添加による大動脈の組織培養実験により、OVXでDNA合成は亢進していた。 (Athersclerosis,in press) (2)血管平滑筋細胞におけるエストロゲン受容体(ER)isoformの機能;血管平滑筋細胞に、発現ベクターに組み込んだERを遺伝子導入し、同時に種々の量のER isoform(exon4欠失体、exon3,4欠失体、exon4,5欠失体)さらにエストロゲン応答配列を上流にもつCAT遺伝子を遺伝子導入し、CATアッセイを行った。その結果、いずれのER isoformも単独では転写活性を認めなかったのに対し、exon4,5欠失体はwild-thpeERの転写活性を抑制した。このことから、血管平滑筋細胞に存在するER isoformのうち、exon4,5欠失体はエストロゲンの作用を修飾する可能性が考えられた。(1995年動脈硬化学会冬季大会にて発表) (3)内皮依存性血管拡張反応に対するエストロゲンの影響;若干健常ボランティアを対象として、末梢血管用超音波ドップラー装置を用いて内皮依存性血管拡張反応の一種である血流依存性拡張反応の性差、さらに女性の月経周期による変動をみた。その結果、女性では月経周期に伴うエストロゲンの変動に対応して内皮依存性拡張反応が変動した。また男性は女性に比べて内皮依存性拡張反応が低下していた。 (Circulation.1995;92:3431-3435に掲載)
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