研究概要 |
【目的】副甲状腺ホルモン関連ペプチド(parathyroid hormone-related peptide:PTHrP)は癌に伴う高カルシウム血症の原因物質として同定されたが、種々の正常組織においてその発現が確認されている。血管では平滑筋細胞における発現が知られており、生理作用として平滑筋弛緩を示すことから、局所因子として血管のトーヌス調節に重要な役割を果している可能性がある。そこで培養血管内皮細胞におけるPTHrPの発現およびサイトカインによる産生・分泌への影響を検討した。【方法】ウシ頸動脈培養血管内皮細胞、ヒト臍帯整脈培養血管内皮細胞を使用した。(1)抗ヒトPTHrP抗体を用いて免疫細胞染色をおこないPTHrPの発現を検討した。次に10%fetal calf serum(FCS)刺激による免疫活性への影響を検討した。(2)interleukin1β(lL-1β)、tumor necrosis factorα(TNF-α)により内皮細胞を刺激し、培養上清中のPTHrP濃度をimmunoradiometricassay(lRMA)にて測定した。またmRNAレベルの発現をNorthern blot analysisを用いて検討した。【結果】(1)免疫細胞染色により内皮細胞においてPTHrP様免疫活性が認められた。この免疫活性は10%FCS刺激では増強されなかった。(2)培養上清においてPTHrP様免疫活性が認められた。lL1β及びTNF-αによる刺激により、培養上清へのPTHrP分泌は時間依存的(10,24,48時間)にかつ用量依存的(0.1,1,10ng/ml)に有意に亢進した。またmRNAレベルにおいても、TNF-α(10ng/ml)刺激により2時間後をピークとして発現亢進が認められた。【結論】PTHrPは培養血管内皮細胞において発現しており局所因子として血管のトーヌス調節に重要な役割をはたしている可能性がある。
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