研究概要 |
平成8年度は、血管平滑筋細胞のエリスロポエチン(Epo)レセプターの有無の検討およびリコンビナント・ヒト・エリスロポエチン(rHuEpo)の細胞内カルシウム濃度に及ぼす影響を検討した。^<125>I-rHuEpoを用いて血管平滑筋細胞のreceptor binding assay法を行ったが、Epoレセプターが存在することを証明できなかった。 ヒトにおいて、血管平滑筋細胞と類似の特性を有する血小板を用いて基礎時およびin vitroでrHuEpo4,40U/mlを投与後、[Ca^<2+>]iの変化を観察し、遊離細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]i)を測定した。対象は慢性血液透析患者17名、保存期慢性腎不全患者21名、未治療本態性高血圧症患者21名、正常血圧者24名であった。維持血液透析患者群と保存期腎不全患者群を加えた腎不全群の平均血圧は、対照群に比し有意に高く本態性高血圧群とに差がなかった。基礎時、維持血液透析患者群と保存期慢性腎不全患者群の[Ca^<2+>]iは136±12、137±11nMと、健常対照群121±13nMに比し有意に高かったが、本態性高血圧群163±16nMに比し低値であった。腎不全群単独では[Ca^<2+>]iと平均血圧とに有意な関係はなかったが、4群全体の[Ca^<2+>]iと平均血圧との間に正の相関(r=0.56、p<0.01)を認めた。rHuEpo4U/ml添加後、各群の[Ca^<2+>]iには変化がなかった。40U/mlによりHD群とESRD群の[Ca^<2+>]iは、本態性高血圧群と健常対照群とに比し有意に増加した(49±20、56±17vs.38±18、25±14nM)。また維持血液透析患者群と保存期慢性腎不全患者群の[Ca^<2+>]iの増加量と平均血圧とに正の相関(r=0.53、p<0.01)を認めた。 以上の結果より、Epoが細胞内カルシウムを上昇させて血圧を上昇させることが示唆された。今回の方法では血管平滑筋細胞にエリスロポエチン・レセプターを証明できなかったが、1996年Ammarguellatらはrat血管平滑筋において初めてEpoレセプターの存在を証明した。
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